美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

2017-01-01から1年間の記事一覧

「未在」に行ったときの話

「ミシュランガイド京都・大阪」の三ツ星常連の未在(みざい)に行ったときの話。 この店を評して、主人の石原氏の名前から「石原劇場」という方がいる。しかし、私はそれは違うと思う。ここには思わずドキッとするような名台詞も、派手なアクションも無い。…

「地図」を見るのはやめて「コンパス」を持とう

ネガテイブなイメージの料理の世界 日本料理の板前の世界というと、どんなイメージを抱かれるでしょうか? 「厳しい」「しんどい」「辛い」「修行」 こんな言葉が並ぶ方も多いのでは無いかと思います。最初は雑用&洗い物ばっかり、すぐに怒鳴られるし、殴ら…

【調理の技法 第5回】 「炊く(焚く)」その2

前回の記事の続きになります。 「炊く」とは最も重要な調理の技法 「炊く」という調理方法は、日本料理の中でも最も重要な調理方法でないかと思います。「焚き合わせ」はもちろんですが、広義で考えれば、出汁を引くことも、ほうれん草のお浸し、鴨ロース、…

【調理の技法 第5回】「炊く(焚く)」その1

「炊く」とは加熱と味付けを同時行う 「炊く」とは加熱と味付けを同時に行う調理方法です。これが一番のポイントです。 今まで書いてきた「切る」「蒸す」「揚げる」「焼く」は味付けとは関係ありませんでした。「塩焼き」とか「タレ焼き」なんかはあります…

【調理の技法 第4回】 「焼く」

「焼く」という加熱方法は、最も原始的な調理でないかと思います。しかし、単純で原始的なことこそ、難しいのです。理由は「だし」の項でも書いた通りです。参考記事:【「だし」について】 基本編 その1 - ガストロノミー.work 色々な場面での「焼く」 日本…

【調理の技法 第3回】 「揚げる」その3

「揚げる」の3回目です。 素材の下処理について それぞれの食材によって方法が違うので、一概にいうことは出来ませんが、基本は「切れ目を入れて油の通りを良くする」「水分をある程度切っておく」「空気の抜け穴を開ける」などでしょうか。 私の友人で以前…

【調理の技法 第3回】 「揚げる」その2

前回の続きです。 なぜ揚げ物は難しいのか 前回の記事では「揚げる」ことは「蒸す」ことに似ていると書きました。 単に油で揚げるだけの料理なので、蒸すことと同じように、温度と時間の管理さえ出来れば揚げ物は出来るようになるはずです。しかし、やってみ…

【調理の技法 第3回】「揚げる」 その1

蒸すことと揚げることは似ている 揚げることは蒸すことに似てるのではないかと思っています。蒸す場合は蒸気、揚げる場合は油という違いはありますが、均一の温度の熱エネルギーで素材を加熱するという点では同じだからです。参考記事 蒸すことと揚げること…

【「だし」について】 基本編 その4

「出汁」についての話です。 前回までの記事は下記の通りです。 出汁について、一つ重要なポイントは同じ味の出汁は二度と引けないということです。 不思議なもので、全く同じ量の水と昆布と鰹節の量で出汁を引いたとしても、毎日味が変わります。昨日と今日…

【調理の技法 第2回】 「蒸す」 その2

前回の記事の続きです。 前回も少し触れましたが、蒸すことによって味は入りません。つまり、味付けと加熱を別々に考える必要があります。蒸す前や蒸した後に塩を振ったり、味付けした出汁に浸しながら蒸したり、蒸し上がった後に「あんかけ」にしたり、別添…

【調理の技法 第2回】 「蒸す」その1

私の知る範囲だけの話かもしれませんが、献立の中に「蒸し物」を常に入れているという店は少ないように思います。献立を立ててみて、何か少し物足りないと感じたら「蒸し物」を一品入れてみたり、秋口の松茸の季節になると椀物の代わりに土瓶蒸しを入れてみ…

僕は「親指」を作りたい

人間は猿から進化したことは誰でも知ってます。では、猿が人間に進化した原因を知っている方はいらっしゃるでしょうか? 一説には「親指」の存在だと言われています。親指があったからこそ、色々な道具を使いこなせるようになったり、木に登れるようになった…

【「だし」について】 基本編 その3

出汁についての3回目の記事です。 前回までは下記の通りです。 出汁についての考察をさらに進めていきたいと思います。前回の記事で二番出汁の役割は旨味であるということを書きました。一番出汁はそれ自体がメインとなるものでしたが、二番出汁は料理をバッ…

【「だし」について】 基本編 その2

前回に続き、出汁について考察します。前回の記事はこちらから。 日本料理で使う出汁(だし)には大きく分けて二種類あります。いわゆる「一番出汁」と「二番出汁」です。 一番出汁は主に「椀物」の吸い地に使います。「二番出汁」は主に色々なものを炊くと…

【「だし」について】 基本編 その1

「出汁(だし)」は日本料理の命と言われます。書店に行って、初級者向けの日本料理の本を読んでみれば、必ず最初の方で「出汁の取り方」が書かれていると思います。では、その出汁とは何なのか、突き詰めて考察していきたいと思います。出汁は様々な料理に…

【調理の技法 第1回】「切る」 その2

今回は切るということが最も重要な要素になる「お造り・刺身」を「切る」ということについて書いています。 前回の記事をお読みでない方は、まずはそちらからご覧ください。 その前に、「造り」と「刺身」の違いについては別記事で書きましたので、そちらを…

【調理の技法 第1回】「切る」 その1

今回から数回にわけて日本料理の調理の技法について書いていきたいと思います。調理の技法と言えば、「焼く」とか「揚げる」とか「炊く(焚く)」などが最初に連想されると思います。第1回の今回は、その中でも少し盲点になりがちな「切る」ことに焦点を当て…

【料理の語源】「造り」と「刺身」の違い

「造り(つくり)」と「刺身(さしみ)」は、ざっくりと簡単に言えば、どちらも生の魚貝類を切り身にして、口に入れる直前に醤油や山葵などをつけて食べる料理です。「造り」は「造里」と表記することもあります。魚貝類だけでなく、牛肉や馬肉、鶏肉、レバ刺し…

世界の名物 日本料理

日本料理を代表する店のひとつである吉兆の創業者の湯木貞一が「世界之名物 日本料理」という言葉を残しています。その言葉から数十年、疑うことなく、日本料理は世界に誇れる文化だと思います。それを絶やさないようにするのが我々の役目です。 だが、しか…

「美食学研究所」設立します

日本料理の料理人を目指す若者は減っているそうです。とある調理師専門学校では、日本料理コースとそれ以外(西洋料理、中華料理、製菓、カフェ、製パンetc)の生徒数が「1:9」で、さらに年々日本料理科の生徒の割合は減ってきている、ともいう話も聞きまし…