【「だし」について】 基本編 その2
前回に続き、出汁について考察します。前回の記事はこちらから。
日本料理で使う出汁(だし)には大きく分けて二種類あります。いわゆる「一番出汁」と「二番出汁」です。
一番出汁は主に「椀物」の吸い地に使います。「二番出汁」は主に色々なものを炊くときや、出し巻き卵のような料理に使います。
ここで気をつけて頂きたいのが、「一番」、「二番」という呼び方です。一番出汁のほうが上位で、二番出汁は下というイメージを持ちがちですが、それは違います。
大は小を兼ねる的な感覚で、一番出汁は二番出汁の上位互換みたいに捉えている人がプロの中にもいますが、それは間違いです。
日本料理における一番出汁と二番出汁は、全く別の役割を担っています。私のイメージでは、一番出汁に重要な要素になるのは"香り"です。そして、二番出汁に重要な要素になるのは"旨味"です。
一番出汁は「椀物」の吸い地に使うと説明しました。これは出汁の味そのものを味わう料理と言ってもいいでしょう。厳密に言えばストレートの出汁では無く、塩や薄口醤油といった調味料を加えるのですが、本当に微量で、醤油1滴、塩ひとつまみで大きく味が変化してしまいます。しかも、ある程度の量を飲みます。日本料理の献立の中で、「食べる」よりも「飲む」という動詞を使うのは、この吸い地ぐらいでは無いでしょうか。調理場の中では色々なものが仕込まれています。ほとんどが食べるものですが、その中で一番出汁というのは唯一の飲むものなのです。
一番出汁は飲み物です。「カレーは飲み物」とか言って笑ってる暇があったら、「一番出汁は飲み物」と心の中で暗唱しましょう。
美味しい一番出汁を取ると言っても、あまりにも旨味の強い一番出汁だと、重たくなりすぎてしまうのです。椀物はまだ献立の序盤です。その段階で旨味の強過ぎるものは、必要以上の満腹感を与えてしまったり、後の料理の印象を薄くしてしまいかねません。また、一口目が美味し過ぎると、一皿食べる頃には飽きてしまいます。
お椀の蓋を開ければ香りで楽しめ、一口飲めばふわっと美味しいと感じ、お椀一杯飲み干しても重たくならない、これが理想の一番出汁では無いでしょうか。
その3に続きます。
雲子と鱈(たら)の霙(みぞれ)仕立て椀@フォーチュンガーデン京都
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