美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

僕は「親指」を作りたい

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人間は猿から進化したことは誰でも知ってます。では、猿が人間に進化した原因を知っている方はいらっしゃるでしょうか?
一説には「親指」の存在だと言われています。親指があったからこそ、色々な道具を使いこなせるようになったり、木に登れるようになったりしました。そして生存確率が上がり、道具を使う為に脳が発達して、人間に進化したというわけです。試しに、親指を封印して行動してみてください。モノを掴んだり、握ったり、捻ったりすることが非常に困難だと思います。



こんな感じで親指を掌の方にピッタリ固定すると何もかも大変。


「何のための団体なの?」と言われることがあります。それに対する私の答えは「日本料理に携わる皆様の親指を作りたい。」ということです。

日本料理の世界では、「仕事は見て盗め」などということが長らく当然とされてきました。今でもそのような職場もあると思います。また、指導的な立場にある人でも、言葉で教えることが苦手な方もいると思います。料理を作るプロである人が、指導や教育、言葉のプロであるとは限りません。長嶋茂雄さんみたいに「シュッとして、ビュッとして、パーン!!」みたいな説明をされても、一部の天才にしか伝わらないのです。

そこで意欲のある若者の成長が阻害されてしまったり、お店の側としても、いつまでも若手が育たないと言った事態になっていないでしょうか?それって物凄く無駄じゃないですか?今の現状、そんなに余裕がありますか?
そう思うわけです。

テクノロジーの進歩は物凄い勢いで進んでいます。シリコンバレーで働く天才達は、どんどん世の中を変えていきます。「人工知能やAIに奪われる仕事」というニュースを見た事のある人も多いでしょう。料理人の世界も例外ではありません。

例えば、フードプロセッサー。昔は手動で刻んだり、すり潰したり、混ぜたりしていた作業が機械化していってます。これも大きな流れで見たら一種の「ロボットに奪われた仕事」でしょう。
市場にある大きな鮮魚店なんかは、鱧の骨切りマシーンなんかが置いています。鱧の骨切りマシーンに関しては、今はまだ大した性能ではありません。しかし、機械という工業製品である以上、時間の経過とともに、必ず小型化、高性能化、低価格化します。必ずです。産業革命以降の人類の200年間の歴史の中で、例外は一切ありません。スマートフォンと同程度の性能のコンピュータも、ほんの数十年前は1台何千万円もして、大学や科学研究所みたいなところにしかありませんでした。それが現在では数万円代になって、1人1台が当たり前なのです。


悲観することはありません。私たちは電卓より計算能力の高い人はいませんよね?長距離走で自動車に負けたからといって悔しがる人もいません。しかし、電卓や自動車の存在は我々を確実に豊かにしました。

自動車といえば、最近では自動運転技術なんてものも研究されています。実現もそろそろ近いのでは無いかと思います。ここで注目したいのは自動車そのものが発明されてから、自動運転が実現するまでに、かなりの時間差がある事です。自動車が発明されても、長らく人間が実際に運転しなければなりませんでした。

料理の世界のロボット化する未来は確実に訪れます。ただ単に卓越した技術があるだけの人では「奪われる仕事」の側になるでしょう。「技術は見て盗め」なんて言ってる人に存在価値を感じる見習いの新人はいるでしょうか?まだ多くの方は気づいてないかもしれませんが、新入社員のほうがお店を選ぶ時代は既に始まっています。


そのときに我々にとって必要となるのが一体何なのか。
私はそれを考え、そのときに日本料理の「親指」になりたいと思っています。