美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

【調理の技法 第3回】 「揚げる」その3

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「揚げる」の3回目です。


素材の下処理について

それぞれの食材によって方法が違うので、一概にいうことは出来ませんが、基本は「切れ目を入れて油の通りを良くする」「水分をある程度切っておく」「空気の抜け穴を開ける」などでしょうか。
私の友人で以前に串カツ屋でバイトしていたミュージシャンの方がいるのですが、「シシトウはホンマ恐怖や!揚げたらイオナズンや!」と言っていましたが、串や箸で穴を開けてから揚げると空気の抜け穴が出来て、イオナズンがイオぐらいにはなると思います。現在ではバイトをしなくても生計が立てられるようになったそうで、何よりです。

我々、料理人の世界で、シシトウよりも何よりも恐怖の対象はイカのゲソです。イカの上身の部分は造りに使って、ゲソだけ余るという状況が頻発します。下っ端のとき言われるわけです。

「おい!このゲソ、賄いで唐揚げにでもして!」

死の宣告です。ゲソの吸盤は水分を含んでいますので、そのまま唐揚げなんかにすると、イオナズンどころかマダンテクラスの大爆発を起こすわけです。しかし、あらかじめ10秒とか20秒ぐらい茹でてから、ザルにあげて乾燥させておくと、いい感じに水分が抜けて、爆発はかなり緩和されます。最初から教えろや!!

話が逸れましたが、素材の適切な下処理を知るということは、イオナズンがイオぐらいまでダメージ軽減させる天空の装備のようなものであると、ご理解してもらえたらと思います。


椎茸を揚げるときも切れ目を入れると、内部まで油が入りやすくなります。


衣について

衣揚げの代表といえば天婦羅です。天婦羅の衣の主成分は小麦粉です。これは時間の経過と温度の上昇でグルテンが発生します。グルテンが増えるとベトっとした重い天婦羅になってしまいます。あらかじめ衣を作っておく場合は、衣の入ったボールを冷やしながら揚げるといった工夫が必要です。余裕がある場合は、揚げる直前に衣を作るのがベストでしょう。

市販の天ぷら粉などを使う場合は、大概がベーキングパウダーが入ってますので、油に落とせば膨らんでいきます。ご家庭などで揚げ物をする場合などは非常に心強い味方かと思われますが、かき揚げなどを揚げる場合は油に入れたら一気にバラバラに拡散していき、難易度が高くなるので要注意です。
普通の小麦粉を使う場合は、グルテンの少ない薄力粉を使うのが基本になります。ただ、なんとなく薄力粉、では無く原理原則から考えて料理作ってもらいたいと思います。