美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

【調理の技法 第5回】「炊く(焚く)」その1

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「炊く」とは加熱と味付けを同時行う

「炊く」とは加熱味付けを同時に行う調理方法です。これが一番のポイントです。
今まで書いてきた「切る」「蒸す」「揚げる」「焼く」は味付けとは関係ありませんでした。

「塩焼き」とか「タレ焼き」なんかはありますが、それは塩味だったり、タレの味だったりを焼くことによって定着させているだけで、「焼く」こと自体が味付けをしているのではありません。タレの味であったり、塩の振り加減が味付け左右する部分であって、「焼く」ことと味付けは何の関係もありません。

しかし、「炊く」だけは加熱技法あると同時に味付けの技法なのです。
これが煮炊きものを難しいと感じる要因です。

煮炊きものをするポジションの人を「煮方」と言いますが、「煮方」が大将や料理長の次のポジションというパターンのお店が多いのではないでしょうか。それだけ経験値が必要な仕事だと思います。

自分の仕事の本質と向き合うこと

もちろん、一旦材料を茹でたり蒸したりして、火を通した後で炊いたり、また"揚げ浸し"といった味付け加熱(ここでは生の素材を食べれる状態まで火を通すこと)を、ほとんど別々に行う炊き方もあります。また、味付けをほとんどしてない出汁で炊いたり、というパターンもあります。
当たり前と言えば当たり前なんですが、一体何をする為に炊いているのかということを考えることが大事です。今は火を通す工程なのか、火を通し終わったものを味付けしているのか、それとも同時に進行しているのか、それをわかって、本質を捉えておく事が大事です。ただ単に教えてもらった通りにやるだけでは何の意味もありません。
教えてもらったことは完璧に出来るけど、応用力が0では意味が無いのです。

世界は必ず変わっていく

例えば、食材ひとつでも、どんどん新しいものが市場に出回ってきています。あなたが望もうと望むまいと、世の中はどんどん進歩していきます。我々はそれに対応出来るように、日々自分をアップデートして行かなければなりません。未知の食材に遭遇したとき、それらの本質をきちんと捉えてどのように、炊くのが正解なのか、自分で考えて正解が出せることがこれからの料理人に求めらる能力だと思います。

その2に続きます。