美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

【「だし」について】 基本編 その3

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出汁についての3回目の記事です。
前回までは下記の通りです。

出汁についての考察をさらに進めていきたいと思います。前回の記事で二番出汁の役割は旨味であるということを書きました。一番出汁はそれ自体がメインとなるものでしたが、二番出汁は料理をバックアップする存在です。それ自体が前面に出るというわけではなく、料理の土台としての機能を担っています。二番出汁をストレートで使うことはまずありません。何か調味料を加えたり、出汁巻き卵や茶碗蒸しの場合は卵と混ぜたりして使います。スキッとしたシャープな切れ味よりも、土台としての安定感のある旨味が求められます。

私は日本料理の世界で仕事を始めて、3年目ぐらいのときに二番出汁を引くポジションを貰えました。毎日、二番出汁を引いていたのですが、ある日、煮方で炊き合わせを仕込んでいる先輩にこんな事を言われたことがありました。

「今日の二番出汁は美味しいから、調味料ほとんど入れんでええわ。」

その先輩は僕のことを褒めていただいていたわけなのですが、嬉しい気持ちよりも、疑問のほうが強くて、「は、はぁ。」と間抜けな返事をした事を覚えています。


出汁が美味しいと「調味料をほとんど入れんでええ」とはどういうことだろう?
だいたいの料理のレシピ本やクックパッドなどのサイトには、出汁も含めた調味料の割合が書かれています。蕎麦だしなら、「だし200cc、醤油50cc、みりん50cc これを合わせて、鍋に入れ、さっと一煮立ち」といった具合です。出汁の味が変わると調味料の量も変わるということが、よく理解出来なかったのです。

何年かした後に、実際に自分が煮炊き物をするようになって、少し理解出来ました。私の持ってるイメージは「出汁は掛け算。調味料は足し算。」です。

(出汁の味)×調味料(砂糖+塩+酒+醤油+味醂+酢+etc……)といった具合です。
目指すべき味のゴールが100点です。
このとき出汁の味が10点だとします。すると、調味料の部分で10の味付けが必要になります。出汁の味が15点だと、調味料は約6.7。出汁の味が20だと、味付けに必要な調味料は5で済みます。

しかし、ここで問題があります。調味料は入れ過ぎると味が濃くなってしまいます。各々の料理に適切な上限値を超えて調味料を足すことは出来ないのです。
目指すべき料理の味の値が100点ですが、調味料を加えられる上限値は10であるという状況を仮定しましょう。ここで9点とか8点の出汁しか取れないと、どれだけ頑張っても90点とか80点の料理しか出来なくなってしまいます。

このあたりに注意して、出汁を取ってみてはどうでしょうか。



その4に続きます。



芋茎(ずいき)と枝豆の梅肉和え@八寸


八寸
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和食とはなにか 旨みの文化をさぐる (角川ソフィア文庫)

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