美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

【調理の技法 第4回】 「焼く」

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「焼く」という加熱方法は、最も原始的な調理でないかと思います。しかし、単純で原始的なことこそ、難しいのです。理由は「だし」の項でも書いた通りです。

参考記事:【「だし」について】 基本編 その1 - ガストロノミー.work

色々な場面での「焼く」

日本料理の献立で「焼き物」と言ったら、多くは焼き魚を指します。しかし、牛肉を使ったり、春先なら筍、秋は松茸なんかを焼くことも多いかと思います。また、メインの食材で無くても、付け合わせの野菜であったり、八寸の中であったり、何かを「焼く」機会は非常に多いです。
また、炭火を使ったり、ガスのグリラーを使ったり、フライパンを使ったり、バーナーの直火で焼いたり、石焼にしたり、焼き方も様々です。

焼き物の難しさ

表面を焼いて、ひっくり返して裏面を焼く。言葉にすると、たったそれだけなんですが、焼き物というのは難しい。
焼き物を難しくしている要因。これは温度だと思います。非常に高温で、しかも直接素材にさらされます。
ということは、細胞の損傷が激しい。つまり、短時間で状態が大きく変化します。炭火焼の場合、ちょっとした炭の配置の違いで大きな違いになってしまいます。これを上手くコントロール出来るかが、焼きのポイントです。

理想の焼き物

理想の焼き物は「中はふっくら」と言われます。また、美味しそうな「表面の焼き目」もその条件と言ってもいいのではないでしょうか。「外はこんがり」とも言います。

基本は「強火の遠火」です。
弱火で焼くと、中から水分が出てパサパサになってしまいます。強火である程度短時間で火を通さなければいけません。
また火か近すぎると、表面が焦げているのに、内部まで火が通ってないということになります。強火の遠火を基本と考えて、状況に応じて中火の遠火などの応用をしてもらえたらと思います。

魚の皮について

よく、焼き魚の皮が苦手という方がいます。仕方のないことですが、少し勿体無いような気がします。なんとか皮まで美味しく食べれるような焼き魚を焼けないかというのが、私の長年の課題であります。
大体の魚の皮の裏にはヌルヌルした部分があります。これが苦手な要因でないかと推察します。
この部分をしっかりと乾かしてやればいいのですが、皮の裏をしっかり乾かそうとすれば、身の方が火が通りすぎてしまい、スカスカになってしまいます。魚の皮に切れ目を入れるというのは非常に合理的な方法だと思います。

焼き方や火加減のコントロールも重要な要素ですが、素材に対してどのように工夫をするのか、それが焼き物を考える第一歩ではないでしょうか。

焼く: 日本料理 素材別炭火焼きの技法

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