【調理の技法 第2回】 「蒸す」 その2
前回の記事の続きです。
前回も少し触れましたが、蒸すことによって味は入りません。つまり、味付けと加熱を別々に考える必要があります。蒸す前や蒸した後に塩を振ったり、味付けした出汁に浸しながら蒸したり、蒸し上がった後に「あんかけ」にしたり、別添えで醤油やポン酢を付けたり、そういった形で料理として完成させることが多いです。
調理中にアクを取ることが出来ませんので、蒸し物に適した食材は元々がアクの少ないものがいいということになります。魚なら淡白で鮮度の良い白身が良いと思います。魚介類や肉類を蒸すときは、あらかじめ霜降りをしたりといった工夫が必要になってくるでしょう。
和食では無いのですが、ギョウザは焼くと同時に蒸して加熱しています。生の肉類はアクが強くて、本来なら蒸すのにはあまり適さないのですが、香味野菜をたくさん入れて臭みを緩和し、蒸すと同時に「焼く」という過程を同時に入れることによって、素材の旨味を逃さない「蒸す」ことの特長を活かした、非常に美味しい料理になっていますね。
蒸すときに一番気をつけてもらいたいのが、蒸す前の素材の芯の温度です。蒸すだけでなく、加熱調理全般に言えることですが、当然ながら熱は外側から入っていきます。外側はベストな状態になっているのに、内部は火の通りが甘い、内部がベストな状態になったときには外側は火が通り過ぎ、というときがあります。茶碗蒸しの"す"が入った状態などが代表格です。
蒸し器の内部、蒸気の温度管理も勿論大切なのですが、それは誰でも気をつけるポイントだと思います。少し盲点になりがちで、大切なのは蒸し始める前の素材の温度管理です。冷蔵庫から出してすぐ蒸し器に入れるのか、常温に戻ったものを蒸し器に入れるのか。器は温かいのか冷たいのか。それでかなり仕上がりの状態や調理時間が変化します。素材の損傷、旨味の流出を最小限に抑えるために「蒸す」という加熱方法を選択しているのに、蒸し始めの温度が低すぎた為に料理自体が台無しになってしまう、ということにならないように気をつけてもらいたいところです。
京洛肉料理 いっしん
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