美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

【京都・丸太町「木山」】シンプルかつストレートな料理

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丸太町の料理屋「木山」に伺いました。
2017年春に新しくオープンしたお店です。
オープンして数ヶ月でミシュランの星を取った、最近話題のお店です。

こちらのお店では、お店をオープンする工事のときに井戸水が湧いたようで、料理はこちらの井戸水を使用されているようです。
料理が始まる前に、この井戸水の白湯を頂きましたが、非常にスッキリとした美味しい水でした。
水は料理を作る上で非常に大きな役割を果たします。
非常に期待が高まります。

15000円コースをいただきました。
料理はとてもシンプルでしたが、シンプルな料理というのは提供する側から見れば、一つのミスも許されない緊張感を強いられます。
全てが高いレベルでまとめられてあり、食後は非常に感動を覚えました。

内容を写真付きで御紹介します。

  • 先付:唐墨(からすみ)と黒豆の飯蒸し
  • 小吸物:海老と粟麩の小吸物
  • 酢の物:河豚のたたき
  • 鰹節食べ比べ
  • 椀物:蟹真薯、蕪、金時人参
  • 造里:石鯛、平目
  • 強肴:海老芋、雲丹、雲丹醤油掛け
  • 焼物:ローストビーフ、リンゴ 九条葱ソース掛け
  • 油物:カワハギ、堀川牛蒡、蓮根の天ぷら
  • 蒸物:甘鯛の蕪蒸し
  • 御飯物:牡蠣丼、白米、鰹節、ちりめん山椒、玉子かけごはん、香の物
  • 水物:洋梨のジュース
  • 菓子:百合根きんとん
  • 抹茶

先付は正月ということで、縁起物の唐墨(からすみ)と黒豆の飯蒸しです。
唐墨は非常に薄くスライスしており、飯蒸しと一緒に食べるとちょうど良い塩加減です。
黒豆は甘み無しで炊かれており、黒と白の色合いのバランスが良いです。

お酒にも合う先付で、非常に考えられていると思いました。

海老で出汁を取ったスープです。
この出汁が、海老の味が非常に濃厚に出ていて美味しいです。少量でも野趣があってメリハリを感じます。

河豚(ふぐ)のたたき
河豚は大きめのブツ切りにしてあり、旨味と食感が堪能できます。
中にグレープフルーツが入っており、ポン酢の酸味だけでなく天然の酸味も加わって、味の奥行きが感じます。



お椀は蟹真薯(かにしんじょ)ですが、その前に鰹節の食べ比べです。

御主人が目の前で削った鰹節を三種。
荒節と本枯節と鮪節です。
これらを使って目の前で出汁を引いて貰えます。
色々な種類の鰹節を使うことで出汁の味に深みが出ます。
一種のパフォーマンスですが決して大袈裟なものではなく、料理の理解を高めてもらおうという感じで好感が持てます。

お椀は本当に美味しいです!
塩や醤油の味付けは少量で、純粋に出汁の味だけで勝負しています!
かといって薄味過ぎるということは全くなく、ベースとなる昆布も鰹節も重厚に感じます。
食後のくどさは全くなく、程よい旨味でスッキリとシャープな理想的な一番出汁ではないでしょうか。良質の井戸水というのが最高に活かされています。

蟹真薯はしっかりと蟹の味がして、出汁との相性は最高です。


造りは平目と石鯛
どちらも数日寝かせたものです。少し大きめに切ってあり、よく噛めば中から甘みが感じられるような工夫がされています。
醤油も少々甘めで美味しいです。全部飲んでしまいました。


海老芋、雲丹(うに)、雲丹醤油掛け
海老芋は一度炊いてから揚げております。
海老芋の味付けは完璧です。
ここでも良質な出汁の存在感が輝いております。
雲丹(うに)はミョウバンの臭さは全く感じることが無くて、本当に美味しいです。


焼物はローストビーフ、リンゴ 九条葱ソース掛け
肉の旨味にリンゴが酸味と甘みを足して良いアクセントになっており、センスを感じます。
個人的に葱が好きなので、九条葱ソースは嬉しいです。美味しいのですが、少しクセがあり好き嫌いのありそうな部分です。


カワハギ、堀川牛蒡、蓮根の天ぷら
衣が薄めで重くなく、素材の味がしっかりと感じられる天ぷらです。
別付にカワハギの肝醤油。臭みは全くありません。


甘鯛の蕪蒸し
蕪蒸しの餡は醤油を使わず塩で味付けしているため白い餡です。結構珍しいです。
醤油を使わない分、コクは無くなりますがスッキリとした味になり甘鯛の味がより感じることができます。


御飯物は炊きたての白御飯。
それを牡蠣丼にするか、出汁茶漬けにするか、削りたての鰹節とちりめん山椒で食べるかチョイスです。
せっかくなので、全種類を少しずついただきました。

米は佐渡のコシヒカリ。ここでも水の良さが活きており、抜群の美味しさです。


さらに追加で玉子かけごはん
贅沢に卵黄のみ使用です。
写真で見て貰えればわかりますが、非常に濃厚な卵黄です。
絶対美味しいやつです。


搾りたての洋梨ジュースです。
フルーツを提供する店が多いと思いますが、ジュースにするという発想は素晴らしいと思いました。
甘みと爽やかさで、食事の満足感は非常に高まります。


締めくくりは抹茶と百合根きんとん
中に入っている漉し餡の甘みは控えめで、百合根の本来の味が楽しめます。


シンプルかつストレートな料理が多いですが、完成度は非常に高く、本当に感動しました。
先ほどの繰り返しになりますが、シンプルな料理というのは、一つのミスも許されない緊張感を強いられます。これだけ高いレベルで提供される御主人、スタッフの方々に脱帽です。
水の美味しさというのを感じられます。
カウンター9席と個室の20席ほどのお店です。
御主人の接客も非常に心地良く、カウンターがオススメです。
おそらく、将来的には予約の取れない店になるのではないかと思います。


木山(きやま)
京都市中京区堺町通竹屋町下ル西側 ヴェルドール御所1F
TEL:075-256-4460

水の美味しさについての記事はこちらで解説しています。

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