美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

【献立について考える】「八寸」(八寸とは何か)

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八寸とは

「八寸(はっすん)」とは少し聞きなれない言葉かもしれません。日本料理の献立の一つです。
元々は茶道の懐石において、一辺が8寸(約24センチ)の正方形の杉の盆に山の物と海の物を一種類ずつ盛り付けたものです。

一汁三菜の一通りの料理を食べ終わり、緊張感から解き放たれ、この「八寸」から亭主が客に酒を勧めることになります。そのときに食べる肴を八寸四方の盆に盛り付けたのが起源になります。
現代でも茶懐石の場合はこのような形式に則って供されます。

しかし、一般的な料理店の「八寸」は、一口二口ぐらいの小さな酒肴的な料理を何品か盛り込み、献立の中盤で供される場合が多いです。
しかし、先付として「先八寸・前八寸(さきはっすん・まえはっすん)」として出す場合、先付の後に前菜の盛り合わせとして提供する場合、八寸と焼物を一緒に盛り込んだ「焼八寸(やきはっすん)」として提供される場合もあり、そのスタイルはお店によって様々です。

「八寸」で"楽しさ"や"豊かさ"の演出を

この八寸ですが、これといった決まりは少なく、献立を考えるときに自由に色々と出来る部分が多いのでは無いでしょうか。

中には「八寸」の無い店もあります。
ただ、この八寸が無くなってしまうと、日本料理の特徴として、料理全体がシンプルになり過ぎてしまいます。
お造りを切って、お椀の出汁を引き、魚を焼き、ご飯を炊いて、という仕事ばかりになります。
すると、素材の質、技術のレベルがストレートに料理の出来栄えに直結する仕事ばかりになります。
少しのミスも許されない緊張感のある仕事ばかりで、かなり神経を使うことになります。
それでもいいと言う人もいるかも知れませんが、カウンター席などの場合、お客様の方も料理人がずっと緊張感を持ちっぱなしだと疲れてしまいます。

やはり飲食店にはある程度の"楽しさ"や"豊かさ"も必要です。それを演出するのに八寸は非常に有効になります。

季節の演出としての「八寸」

季節の表現にも八寸は非常に効果的です。
食材だけでなく、飾りや花や葉っぱといった植物を盛り付けに使うことも自由にすることが出来ます。

初夏には"茅の輪(ちのわ)"を模した飾りを使ったり。

※茅の輪については「茅の輪くぐりの由来や意味は?正しいくぐり方や作法! – 豆知識PRESS」が詳しいです。そちらをご覧ください。


秋は色付いた葉っぱを盛れば見た目にも美しくなります。

まとめ

こうして考えると、「八寸」は非常に"華"のあるもので、見た目にもインパクトを与えることが出来る料理であると言えるでしょう。
メインディッシュとは少し違うかも知れませんが、盛り上がりの一つとして考えることが出来るでしょう。