美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

「先付」について その2【続・先付の条件】

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前回の記事の続きです。
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続・先付の条件

さて、先付に必要な条件の続きです。

季節が感じられる

日本料理と言えば季節、季節、季節。
献立を考える立場の人は、毎日季節の事を考えている季節を何よりも大事にしている、というような人もいるのではないかと思います。
先付の季節感は本当に大事です。
我々は、どちらかと言えばのど真ん中よりも、少し走り気味の食材を使ったほうがいいのでは無いかと思っています。
「あ、今年もそんな時期なんだ。」「今年の初物だ。」というのは、とても強い印象を残します。ここでの印象はご来店されてから、数日、数ヶ月、ときには数年経っても残るものでは無いかと思います。旬の食材を使うと「この前も食べたな」となる可能性が高いです。あまり大きく外さずに、やや走り気味、というのがポイントです。

驚きのあるもの(食感など)

前項の少し走り気味の食材を使うという部分と狙いは近いです。お客様にとって、お店の印象というのは時には数年も長く頭の中に残ります。食感などに工夫を凝らした「驚きのある美味しさ」というのは使えるならば、先付から使うのがいいと思います。後に続く椀物、造りは、どうしても一定のがあります。

店のコンセプトと一致している

ここまで色々と書いて来ましたが、献立は全体を通して考える必要があります。
お店によって、コースの金額や来店の用途は様々です。
また、お店のしつらえ、器などを考慮して、「高級食材を入れないとダメだ」とか、「ここは野菜だけで」など、考えなければいけないでしょう。
また、いくら驚きのあるものと言っても、あまりにも店のコンセプトと大きく外すと浮いてしまいます。うまくバランスを取る必要があります。

重過ぎない

コースの最初から、満腹感のあるようなポーションの重いものを提供すると、後の料理に影響が出ます。
日本料理は繊細なものが多いです。
先付だけ印象が強くて、後の料理が目立たないようでは困ります。
見た目の美しさ驚きのあるものを志向しつつも、大げさになり過ぎてはいけない。
豪華であるよりは、さりげなく美味しい、と言ったポイントを狙っていきたいところです。

かと言って、すぐに食べ終わる量でも困る

前の「重過ぎない」と両立させるのは少し難しいかもしれません。
しかし、先付の後には、椀物、造りが控えています。
ここは日本料理のメインとも言えるポイントで、調理場の中が一番忙しくなるところです。
お椀の出汁は引き立て、造りの魚は切りたてが一番美味しいです。
お店の席数、お客様の入り具合にもよりますが、出来れば作りたてのものを食べてもらいたい。
先付を一口、二口で食べ終わってしまうと、少し余裕が無くなってきます。
ある程度、「先付で時間を稼ぐ」という視点を持つと、仕事がスムーズに回せるのでは無いでしょうか。

食欲のそそるようなもの

酢が効いていれば、よりベター

日本料理のコース料理となると、だいたい食事に2時間ぐらいはかかります。
そのスタートを切る料理は食欲を刺激するようなものが適切でしょう。
酢とは酸味です。適度な酸味には、消化を助け食欲を刺激する効果があります。
「寿司ならいくらでも食べれる」という人は結構いますが、これが海鮮丼になると同じ人でも食べられる量には限界があるでしょう。
これは寿司飯に入っている酢の効果が大きいと思います。
単なる調味料の酢だけでなく、柑橘の果汁は風味や香りもよく、日本料理の先付には多用されます。

次回、その3でまとめにしたいと思います。


柚味噌豆腐@懐石割烹 露庵 菊乃井

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