【献立について考える】「焚き合わせ」
「焚き合わせ」について考える
「焚き合わせ」についてですが、「焚く・炊く」というのは日本料理の調理法の中でも一番難しいものであるというのは、以前に【調理の技法】の記事で書いた通りです。
参考記事
単に「煮物・炊き物」という場合は、ご飯のおかずになるようなものであるのですが、料理屋の「焚き合わせ」は酒の肴になるものであることが必須条件です。
煮炊き物は、素材の違い、味付けの濃淡、使う調味料の種類などを考えれば、ほとんど無限といってもいい可能性があります。
それ故に、料理の自由度も非常に高く、研究のする余地の多い部分です。
野菜を使うことが多いですが、麩や湯葉などの乾物類、若布などの海藻類、新鮮な魚類、タコやイカ、アワビやエビといったものも多く使われます。
個々の素材の持ち味を活かした味付けをして、さらにその個々の煮炊きものを組み合わせることで、全体としてのまとまりのある味付けを作り出す、とても難易度の高い料理です。
また、「焚き合わせ」でなく、「蒸し物」や「揚げ出し」のようなものを焚き合わせ代わりとして提供するような場合も考えられます。そう考えれば本当にバリエーションは無限にあり、考え方次第で献立の山場にすることも可能でしょう。
とても重要な出汁の使い方
煮炊きものをするときに、味のベースとなる出汁が重要な働きをすることは言うまでも無いでしょう。
最近は焚き合わせに一番出汁を使うお店もあるようですが、吸い地用の一番出汁と煮炊きものをするときの二番出汁は別々のものを用意するべきでしょう。
参考記事
一番出汁というのは飲み物であるべきで、これを味付け用の出汁と兼用することは出来ません。
献立の調整役としての「焚き合わせ」
先ほどは、考え方次第で献立の山場となる可能性もあると書きました。
しかし、私の考え方は逆に、「焚き合わせ」というのは献立の谷になる部分としての価値があるのでは無いかと思うのです。
日本料理のメインディッシュというのは、やはり「お椀」と「造り」、さらに「焼き物」は動物性のアミノ酸的な旨味を表現することが多く盛り上がりを見せる場所です。
何かと高級食材を多く使い、ご馳走ばかり並んでしまうと、全体的に重くなり過ぎたり、メリハリが無くなってしまいます。
焚き合わせの可能性は無限にあります。献立の谷としての機能をここに持ってくるというのが一つの手では無いかと思うのです。
逆に「焼き物」を茄子の田楽のような枯れた料理にする場合は、焚き合わせを豪華なものにしてみたりと、自由度の高い分、献立の流れの中の調整役として活躍してもらいたいポイントです。
ただし、「献立の谷」と言っても力を抜いていいという意味ではありません。
漠然とした言葉になりますが、「ほっとするような美味しさ」というのが理想です。
わかしろ
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