美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

お金を取れる「料理」とは

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おかずと「料理」の違い

賄い(まかない)は調理に慣れるということを考えたとき、とても重要な仕事であると以前に書きました。

しかし、賄いはお金の取れる「料理」ではありません。
我々が目指すべき「料理」とは、季節感にこだわり、素材にこだわり、調理に手を掛け、盛り付けの器にもこだわり、「総合芸術」と言っても過言では無いかと思います。一品一品の料理、また献立全体の流れといった食べることだけでなく、玄関や店構え、お座敷の掛け軸や生けられた花、サービスを含めてはじめてお金の取れる「料理」になります。
特に、料理店の料理は酒を飲むための料理という面もあり、ご飯のおかずとは少し違います。最近ではあまり酒を飲まない人も増えているようで、アルコールの入っていないドリンクを豊富に揃える工夫などが、これからの時代には必要で無いかと思います。私が以前に食事に行ったお店では自家製ジンジャーエールがあって、凄いなと思ったことがあります。

料理に命を吹き込む

この様な総合的な魅力によって、1食何万円という商品価値が生まれてくるのです。
献立の流れというのも重要な要素で、同じような味付けにならないように注意しなければ、食べる途中で飽きてきたり、楽しみが少なくなってしまいます。
料理店の料理というのは、単にお腹が空いたから食べるというだけでは無いことを作る側の人間は自覚しなければいけません。
そう考えれば、単に料理のことだけでなく、歴史や文化や芸術に関する勉強も並行して行わなければいけないでしょう。

献立も先付から水物まで、だいたい10品前後になるかと思いますが、出来るだけ材料が被らないように、細部まで緻密に計算して、一品一品決定していくのは、まさに命を吹き込むような作業になります。

人が感動するレベルを目指す

食べて「美味しい料理」というのは料理店に取っては当たり前であって、スタートラインでしか無いのです。
例えば、歌を歌うというということで考えてみます。「単に歌う」だけなら大多数の人が出来ます。これが「人前で上手に歌う」となれば、難易度は上がりますが、練習したり、経験を積んだり、元々上手かったりする人であれば、カラオケで友人から褒められるぐらいのレベルの人は多いかと思います。
「聴いている人が感動する歌を歌う」となると、急激に難易度は高くなり、どのように取り組んでいいのか見当もつかないようになります。1人何万円という商品価値を持った「料理」を作る為には、「人が感動する」というレベルを目指さないといけません。それが料理人の仕事の難しさであり、面白さではないでしょうか。