美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

「煮物椀」について その3【吸い口・あしらい編】

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煮物椀についての3回目です。
1回目2回目をまだの方はそちらからお願い致します。


吸い口について考える

「吸い口」とはお椀に入れる香りのもののことです。
木の芽柚子茗荷すだち生姜などが多く使われます。

季節感。香り。味のバランスの調整。盛り付けの色合い。食欲増進。などの効果があります。
季節の移り変わりを表現するのに大変便利で、同じ柚子でも、夏は青柚子、冬は黄柚子と使い分けることだけで、季節を表現することが出来ます。こういう食材は大変重宝いたします。
他には冬場の薄葛仕立てのお椀なんかだと、生姜の絞り汁を数滴で料理の格式が凄く上がります。蛤の潮仕立てのお椀には黒胡椒の相性がとてもいいです。

煮物椀という料理を考えたとき、お椀の蓋を開けたときの、フワっと立ち込める香りが楽しみの一つです。この香りは吸い口の香りになります。ほんの少しのものですが、一皿の中で大きな存在感を持ちます。

あしらいについて考える

「あしらい」「椀妻(わんづま)」とも言います。
あしらいには主に野菜を使うことが多いです。
前回の記事でも述べましたが、椀種には魚介類やその真薯を使うことが多いので、そのバランスを考えてのことでしょう。春先には若布のような海藻類を使ったり、秋口にはキノコ類を使うこともよく見られます。
色どりを表現する為に、菜の花ほうれん草三度豆といったのもの。人参なんかが定番です。
これは煮物椀に限ったことでは無いですが、料理の色彩というのは、が鍵を握っていることが多いです。
最近では、お椀のあしらいにトマトを使う店もあります。トマトは旨味成分であるグルタミン酸が多く含まれており、鰹節のイノシン酸と相性が良いようですね。

まとめ

お椀の吸い口やあしらいに決まったルールというのはありません。
しかし、根本的には、出汁椀種との相性季節感が基本となります。
お椀というのは日本料理のメインディッシュになります。以前に先付はやや走り気味が良いのではと述べましたが、煮物椀に関しては、やはり季節を大事に旬のものを使うのが良いと思います。

その4に続きます。


煮物椀(鱧、蓴菜、胡瓜、青柚子)@割烹 やました

割烹 やました
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