美食学研究報告

日本料理の次世代への継承と、更なる発展。日本料理を未来に繋ぐ。

食べ合わせの良い素材・悪い素材 その1【相性の良い食材の組み合わせ編】

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素材の相性について

料理を作る上で、素材の相性というものがあります。
相性というのは色々な要素が重なり合って生まれてきます。
出会い(旬が同じ)、色合い、香りや味の相乗効果、臭みや油っこさを消したり、食感のバランスだったりします。
日本料理には、昔から相性が良いとされてきた素材の組み合わせ、悪いとされてきた組み合わせがあり、代表的なものについて考察していきたいと思います。

相性の良い組み合わせ

筍と若布

春の定番である「若竹煮」ですが、これは代表的な相性の良い組み合わせです。
筍と若布の二つの食材の旬が一致しており、白と緑の色合いも美しいです。
また、筍の固めの歯応えに対して、若布は柔らかくて、食感のバランスも良いです。
栄養的には、筍はアクの原因となるシュウ酸が多く含まれており、これはカルシウムの吸収を悪くすると言われていますが、若布にはカルシウムが多く含まれており、補給出来るという点が素晴らしいです。
また、筍は若布と一緒に炊くと柔らかくなると言われていますが、これは若布に含まれているアルギン酸の働きによるものでは無いかと言われています。

鰤(ブリ)と大根

「ブリ大根」と言えば、北陸地方の代表的な郷土料理ですが、現代では冬の定番の惣菜と言っても良いのでは無いでしょうか。
鰤(ブリ)は冬場に油が乗ってきて非常に美味しくなります。
大根は今では一年中栽培されていますが、本来の旬というのは冬です。

鰤を煮物にするときは、通常はアラと呼ばれる頭や骨の部分を用いることが多いです。
この部分は、旨味は非常に濃厚なのですが、癖が強いです。
大根は加熱すると辛味が甘味に変化すると共に、調味料や出汁の味を吸収しやすい性質を持っています。また、大根には独特の臭さがあり、それが鰤のアラの癖を矯正するような働きがあります。

ドジョウ・アナゴ・ウナギとゴボウ

ゴボウは繊維が荒く、煮炊きしたとき、調味料や出汁を吸収しやすいです。また、油や味噌との相性が良いです。香りが強いという特徴があります。
ドジョウやアナゴ・ウナギは川魚独特の臭みがありますが、ゴボウと一緒に調理するとゴボウの香りが臭みを消す作用があります。
また、ゴボウの方には魚の旨味を吸収してくれます。
食感のバランスも、ゴボウは固く、ドジョウやアナゴやウナギは柔らかく、バランスが良いです。
この組み合わせの日本料理では「柳川鍋」や「八幡巻き」などが定番です。

貝類と分葱(わけぎ)と酢味噌

春先には貝類の多くが旬を迎えます。
分葱(わけぎ)とはネギの変種でこれも春先が旬になります。
貝類の旨味成分はコハク酸がメインとなりますが、コハク酸には独特の臭さがあります。分葱(わけぎ)はネギの一種で香味野菜ですので、この臭みを緩和する役目があります。
酢には殺菌作用があり、貝類の食中毒の危険性を緩和してくれます。また、味噌には臭いを吸収する作用があり、これも貝類の独特の臭さを消す作用があります。

松茸と鱧(はも)

松茸と言えば秋の味覚の王様のような食材ですが、命は何と言っても香りです。
香りを殺さないように調理することが大切になります。
そのために、組み合わせる食材には強い味や香りのあるものは避けたいところです。
鱧(はも)は強い旨味を持っていますが、味自体は淡白で、松茸との相性は抜群です。
鱧(はも)の旨味の主成分はイノシン酸で、松茸の旨味の主成分はキノコ類に多く含まれているグアニル酸です。イノシン酸とグアニル酸の組み合わせは相乗効果があり、一緒に調理することによって掛け算的に旨味が増幅する効果があります。
松茸と鱧を組み合わせた料理は「土瓶蒸し」や「煮物椀」「吸い物」などがあります。

鴨肉と葱(ねぎ)・芹(せり)

「カモネギ」と言えば諺になるぐらい昔からある相性の良い組み合わせの代表です。
最近の鴨料理には合鴨が使われることが多く、年中食べることが出来ますが、野生のマガモは冬が旬です。
一方の葱ですが、こちらも今では年中食べることが出来ますが、冬の葱は甘味が増し、非常に美味しくなります。

鴨の味は野趣があり、独特の臭みがあります。これを葱の香りが抑えてくれて、マイルドになります。
鴨肉にはビタミンB1が多く含まれているのですが、葱に含まれる刺激成分はビタミンB1の吸収を良くすることがわかっています。栄養的にも非常に良い組み合わせです。

芹(せり)も冬場に旬を迎え、特有の香りがあり、鴨との相性が良いと言われています。

鯖(さば)と味噌

鯖の味噌煮と言えば、定番の和の惣菜ですね。
鯖は青魚特有の臭みがありますが、味噌には臭みを吸収する効果があります。一緒に煮ることによって、鯖の臭みを取ってくれる役割があります。
また、味噌は短時間でも味が絡まりやすいので、煮崩れせずに、ふっくらした状態で仕上げることが出来ます。

まとめ

今回は相性の良い食材の組み合わせについて記事にしてみました。
昔から言われていた組み合わせばかりですが、栄養的にも効果的な組み合わせも多く、先人達の知恵は素晴らしいなと思います。
斬新な新しい料理も良いですが、古くから伝わるものにも良いものは沢山あります。

次回は食べ合わせの悪い組み合わせについて考えてみたいと思います。
よろしければ、そちらも合わせてご覧ください。