【料理の語源】「煮物椀」と「吸い物」「汁物」
「煮物椀」と「吸い物」の違い
「煮物椀」と「吸い物」の違いです。
実際に日本料理の現場で仕事をしている人間の感覚でいえば、「煮物椀、椀物」と「吸い物、汁物」とは大きな違いがあるように思います。
調理場のエライ人の「なんやねん、このお椀。汁ちゃうねん!やり直せや!!」という怒号を聞いたことがあります。
あまり聞きなれない「煮物椀」という言葉
「煮物椀」いう言葉もあまり聞きなれないかもしれません。
以前、お客様からの予約の電話でこんな事がありました。
「こちらのコースは、お弁当と煮物椀、食後の水物のセットになっております。」
「え?煮物?煮物ってなんですか?別に煮物は要らないんですけど!!」
「あ。いや、え〜っと。今は、こちらのコースでは海老しんじょうのお椀を吸い物の代わりに御用意させて頂いておりましてですね・・・。」
「あ、そうなんですか!煮物じゃ無くて、お吸い物なんですか!?」
「あー、いや、え〜っと・・・。その・・・。」
「お弁当の中に煮物は入ってないんですか!?別でまた煮物が付くんですか!?」
「別で付くのは、海老しんじょうのお椀になりまして・・・」
「お吸い物なんですよね!?煮物じゃなくて、お吸い物なんですね?」
「・・・。あ、いや、まぁ、その、え〜っと、お椀物です。椀物です。」
「じゃあ、予約します!」
「あ、ありがとうございます。(予約すんのかい!!)」
「煮物椀」とは
一般的に「煮物」と言えば、南瓜とか小芋とか豆とか、そういったものをイメージされると思います。
日本料理(懐石・会席料理)の世界では椀物のことを正式には「煮物椀」と言います。
汁が張ってありますが、西洋料理のスープとはちょっとニュアンスが違います。
煮物椀(鱧真薯、松茸、青芋茎、松葉柚子、梅肉)@和ごころ泉
「煮物椀」という言葉は茶道の懐石が由来になっています。
僕の持ってる実用 茶道用語辞典
の「煮物」の項をちょっと見てみましょう。
懐石料理の一種。椀盛・菜盛ともいう。
一汁三菜の一菜で、主となるもの(鮮魚の生身・鶏肉・精進ものなど)に野菜・海藻類の二、三種、汁、吸い口からなる。
実用 茶道用語辞典より
横にチラ見えしてる「煮物椀」は、器としての煮物椀、漆器の説明になってますので、ここでは割愛します。
辞書的な意味だとわかりにくいので、少し解説します。
「主となるもの」とは【椀種】です。
「野菜・海藻類の二、三種」は【あしらい】のことです。
「汁」は【吸い地】
「吸い口」は柚子や木の芽などの【香りになるもの】です。
これらの要素が必要なんですね。
お正月に食べる「雑煮」も「煮物椀」の一種と言えます。
「吸い物」「汁物」
「汁物」は一汁三菜の「一汁」の部分に相当します。「吸い物」という言葉は微妙なんですが、感覚的にどちらかと言えば「汁物」に近いです。
こちらも実用 茶道用語辞典から引用しようと思ったんですが、器の説明しかありませんでした。
簡単に言えば、懐石では「汁物」は「飯」とセットで出されます。
会席料理でも「汁物」の中には「ご飯と一緒に食べる」というニュアンスが含まれるように思います。
会席料理では、ご飯と一緒に最後に出される赤出汁とかが、「汁物」に相当します。
「吸い物」は「汁物」の中で特に透き通った「すまし汁」のことを指すことが多いように思います。
和ごころ泉
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