事業に関わる「お金」のリアル【第5話】「金融機関の行動原理を知る!」
どうも、美食学研究員 あとむら(@gastronomy_work)です。
料理人の皆様の中には、独立を目指している方も多いでしょう。
もしくは、既に自分のお店をオープンさせた人もいるかもしれません。
料理人の方に限らず、事業を行う上で切っても切れないのが「お金」の話。
お金についてのブログ連載の記事になります。
題して「事業に関わる「お金」のリアル」
今回は第5話です。
前回まではこちらになります。
事業に関わる「お金」のリアル【プロローグ】
事業に関わる「お金」のリアル【第1話】「金融リテラシーを身に付けろ!」
事業に関わる「お金」のリアル【第2話】「平時の兵法 有事の兵法」
事業に関わる「お金」のリアル【第3話】「融資は投資」
事業に関わる「お金」のリアル【第4話】「関係者に優先順位をつける」
それでは、今日もよろしくお願いします。
金融機関って一体何だ?
どんな商売をするにしても、大切なのは「色んなことを知ること」でないでしょうか。
「俺は料理だけ知ってればいいんだ!」と思っている人は、いつか大きな壁に当たるのではと思います。
いきなり漠然とした話になってしまいました。
今日のテーマは「金融機関(銀行)って一体何だ?」というところを書いていきます。
金融機関(銀行)とは?
前回の記事では、「事業における利害関係者とは大きく5者」という話でした。
つまり、自分(家族)、顧客、従業員、仕入先、金融機関でした。
(前回の繰り返しになります。まだ読んでない方は合わせてどうぞ。)
多くの人にとって、この中で金融機関が最も"よく分からない"存在でないでしょうか?
彼らの仕事とは一体何なのか、どのような原理に基づいて行動するのか、ということを書いていきます。
金融機関のビジネスモデル
銀行をはじめとした金融機関というは、物凄く簡単に、乱暴に言えば「手元にあるお金を貸して、そこから利子や手数料を取って儲ける」というビジネスモデルになります。
(お金を仕入れたり、融資を回収したり、国債を買ったり、という部分は今回は置いておきます。)
彼らは「お金を貸せば貸すほど儲かる」「長期間に渡ってお金を借りて貰えれば貰えるほど儲かる」というインセンティブがあります。
一方で、お金を借りる側は「出来るだけ早く借金を返そう!!」という衝動に基づいて頑張りますよね。
そこで借りた側が頑張ってある程度返済していくと、貸す側は「ここで大きな仕事をしましょう!」とか「多店舗展開を!」とか「当行と社長との間には大きな信頼関係があります!」とか言って融資の増額を提案してくるんですよ。
て、金に目が眩んだ事業主は、ぶら下げられたニンジンに食いついちゃう。
金融業というのは世界で最も洗練されたビジネスモデルを持った事業です。
あの手この手で、お金を借りて貰えるように仕向けて来ます。
(内部で働く人は常に上司から「数字上げろ!」と詰められてるんじゃ無いでしょうか?
僕は金融業で働いたことが無いのでわかりませんが。)
借金って返そうと思ってマジメに決まった返済を続けていたら終わらないんです。
もちろん強靭な精神力で銀行の追加融資の提案や接待を断り続けて、借金を完済したというのは人も中にはいるでしょう。
でも、そんな人って稀な存在じゃないでしょうか?
知り合いに銀行で融資担当として働いている人がいたら聞いてみてください。
「あなたが今まで担当している融資先で、全ての融資が完済された案件はどれぐらいですか?」
たぶん「ゼロ」とか「ほとんど無いよ」と言われると思います。
「借金を完済する」ということは、借り手側からすれば大きな目標ですが、貸し手側からすれば「私は無能です」という証明なのです。
銀行の融資担当が融資を終了させちゃったら、銀行員の最大の目標である出世が出来なくなっちゃいます。
「リスケ」の提案は地獄へ続く高速道路
「リスケ」と言う言葉をご存知でしょうか?
正確に言うと「リスケジュール」と言います。
リスケジュールとは要するに「再スケジュール」、「月々の返済がキツイから返済額を減らす」「新たな返済スケジュール」の事です。
これが地獄へ続く高速道路ということは金融リテラシーが高い方なら、すぐにご理解頂けると思います。
金融機関の融資の基本的な設計構造について。
1.毎月の支払いについて(金利と返済の順序)
2.単利と複利
3.借金が雪だるまになる日
について、アナキンさんが非常にわかりやすい解説をブログにてされています。
一読して貰えれば理解が深まると思います。
読むのが面倒臭い方へ、重要ポイントを説明すると、
借金というのは利息の支払いが先で、元金の返済が後というようになっています。
どんな借金でも一緒です。
つまりリスケして毎月の返済を減らすというのは、元金の支払いが進まない。
大雑把に言ってしまえば、元金は減らさず利子だけ払うという状態です。
毎月、一生懸命に働いて利子だけ払っても100年経っても自分が生きてる間に借金は無くなりません。
リスケジュールなんてやっちゃいけない。
返済すればするほど完済からは遠ざかる。
多くの場合、現場のリアルな融資というのはそんな構造になっています。
まるで追い掛けても追い掛けても逃げていく月のよう。
もちろん完済出来るならしたほうがいいよ。
そりゃ当然。
でも、多くの人に迷惑かけて、多大な犠牲を払ってまで返済続けて、ずっと死ぬまで終わらない借金に追われる人生ってどうなのかな?
次回へ続く
事業に関わる「お金」のリアル【第6話】「法的整理はしちゃいけない!」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
追いかけても 追いかけても 逃げて行く月のように
指と指の間をすり抜ける バラ色の日々よ
THE YELLOW MONKEY 「バラ色の日々」(2000年)